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研究テーマ 加計呂麻島におけるトクナガクロヌカカ発生調査
所 属・氏 名 国際島嶼教育研究センター・野田伸一
島 嶼 名 加計呂麻島
キーワード トクナガクロヌカカ ヌカカ 吸血 エッチ虫 スベ
要  旨  奄美大島の嘉徳地区で採集されたトクナガクロヌカカはTakaoka & Hayashi(1977)によって本種の新亜種(Leptoconopus nipponennsis oshimaensis)として記載された。その生態の調査はMatayoshi, Noda & Sato(1985)によって実施されている。最近相次いで奄美大島北部や加計呂麻島からトクナガクロヌカカによる住民被害(写真1)について相談が寄せられたことから、発生状況の把握を目的として、加計呂間島で2011年4月に現地調査を実施した。
 トクナガクロヌカカの幼虫は海岸近くの砂中に生息し、成虫はその付近で人を吸血するとされている。ヌカカは“糠のように小さな蚊”という意味で、加計呂麻島では服の中に潜り込んで吸血することから「エッチ虫」や「スベ」と呼ばれている(写真2)。住民からの聞き取りでは加計呂麻島では3月末から5月の連休頃に発生のピークがあり、ほとんどの集落で吸血の被害が発生している。
 被害が甚大な諸鈍集落の海岸で幼虫の生息場所を確認するために、6か所で砂を採取した。採集した砂は研究室に持ち帰り、砂を飽和食塩水に入れ、表面に浮いてくる幼虫の検出を試みた。幼虫が回収されたのは海岸と住宅の間にあるハマボウやアダンの林内で採取された2サンプルからで、海側の草の生えていない場所、短い草に覆われた場所、護岸が作られている下部とその上部の4サンプルからは幼虫は見つからなかった(写真3)。吸虫管を使って、朝・昼・夕に人によってくる成虫を10分間採集した。朝に最も多くの成虫が採集されたが、昼間や夕方にも成虫が採集できた。
 今回の調査によって、幼虫の生息場所は海岸付近のハマボウやアダンの林内の砂地で、3月頃から、成虫が羽化して主に海岸で住民に被害を与えていることが確認された。加計呂麻島ではほぼ全集落でトクナガクロヌカカの発生がみられるが、護岸のすぐ上が道路と住宅になっている須子茂集落と西阿室集落では発生していなかった。これらの集落にはトクナガクロヌカカの生息に適した場所がないためであると思われた。
(共同研究者:ナカノ在宅医療クリニック・松尾敏明)
文  献
画  像
 


 

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